公益財団法人 鹿島美術財団

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  2. 佐藤 道信 氏 インタビュー

中南米や東欧の日本美術コレクションをどう考えるか?

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これから日本と海外それぞれの研究者に期待したいことや、在外コレクション研究に関する今後の展望などをお聞かせください。

佐藤 :

留学生の行き来を、いっぱい来てもらって、こちらからも行くという動きをもっと活発にしたいですね。留学生はこれから先、グローバルな研究成果を生んでいく方たちなので、そのような外国の人たちと一緒に研究するということは、日本の学生さんにとっても有意義だと思います。また日本から、あるいは日本への留学生にとっても、最初の出発点のところでいろんなビジョンの設定や見方に触れることは、すごく重要な意味をもってくると思います。留学しながら違う見方に触れていく、同じ立場じゃなくて違う立場の人たちはどうみているのか。そういうことを確認しながら進めていくことで、将来の研究の方向性が違ってきます。論点や方向性の設定のためには、他のやり方を知って、自分たちの見方を相対化することがすごく有効だと思いますので、日本から外国に行き、外国から日本に来て、一緒に研究していくということが重要だと思います。情報化の時代ですが、だからこそ人同士の対面の交流がポイントになる気がしますね。

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今後の研究の展望についてはいかがでしょうか。

佐藤 :

日本美術のコレクションに関して言うと、いま、これまでなぜそこにあるのかが分からなかったような国や地域、中南米のキューバやブラジル、東欧のポーランド、ハンガリー、ルーマニアなどにも、日本美術のコレクションがあることが分かってきました。これらは、単なるジャポニスムの波及というより、収集の背景に少し違いがあるらしい。この辺りのことは、僕もそうした地域からの留学生の人たちの話で知りました。いま研究が進み始めたところで、概況もはっきりしていないんですけれども、重要な問題につながりそうな予感があります。これまではポイントになる国や地域単位で研究されてきたので、それ以外の場所での動きを視野に入れて、つながりや背景を考えていく必要がありそうです。

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各国それぞれに問題が設定されるということですね。

佐藤 :

コレクションは、それを集めた人々の関心やモティベーションがベースになりますから、時期や国、あるいは同じ国でも世代が変わればそれは異なるはずです。僕も今、そうした研究で海外からこられる方々と話しながら、これからどうなっていくのか、楽しみにしています。

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