公益財団法人 鹿島美術財団

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国際会議出席

2024年度
現代アニメーション国際会議「Animafest Scanner Ⅺ」
有持 旭(愛知県立芸術大学美術学部教授)

 2024年6月4日と5日にクロアチアのザグレブで開催された、現代アニメーション国際会議「Animafest Scanner Ⅺ」に出席した。この国際会議は、世界三大アニメーション映画祭の一つであり世界的権威のある、ザグレブ国際アニメーション映画祭の一環として開催された。その目的は、国際的な研究者とアニメーション監督の間で理論的および実践的な議論の相乗効果を生み出すことである。招聘された研究者には、新しい理論を提示したり制作への応用に関して発表することが期待されている。

会場のCultural Information Center

 会場はザグレブ中心地にあるCultural Information Centerであった。二日間開催され、両日とも9時30分に開始され、16時30分に終了した。基調講演としてIngo Petzkeが発表を行った。初日はパネル1「STUDYING EARLY ANIMATION (TRACING SOME BASICS)」とパネル2「ROLE OF EDITOR AND EDITING IN ANIMATED FILM」が組まれ、アメリカ(2名)、ポーランド、オーストラリア、ドイツ、クロアチア、ブラジルの研究者による発表が行われた。二日目は、パネル3「HUMOR IN ANIMATION」とパネル4「AUTHORSHIP IN/OF AI ANIMATION」が組まれ、筆者のほかに、オーストリア、イラン、アメリカ(2名)、ドイツ(2名)、イタリアの研究者による発表が行われた。

パネルのモデレーターを務めたHrvoje Turković

 印象的で刺激的だったものは、世界情勢や国内の政治事情を扱いながらイラン・アニメーション史の概要を明らかにしたF. Omidvarniaの研究である。また、作家自身の抽象アニメーションがロシアの音響装置やドイツの実験映像史から影響を受けていることを公開したM. Hattlerの発表である。パネル4ではAIに関する研究が発表された。現在、世界のアニメーション研究では他の国際会議においてもAIとアニメーションに関する研究成果が散見される。筆者もAIに関心があり、これまでの研究である、絵を描くこととアニメーションの関係や民族誌的アニメーションにAIを含めて再考察する準備をしている段階であるので得るものがあった。

 研究内容のほかに、発表者の発表スタイルも勉強になった。話し方やスライド資料の作成方法である。特に、良くなかった発表スタイルから、何が研究内容を観客にわかりにくくさせているのか分析することができた。今後の自身の発表に活かしたい。

発表風景

 筆者が「Pärn's Humor: Talking in the Fog」と題して行った発表では、エストニア・アニメーションの特徴であるユーモアに関して、プリート・パルンという作家の発言や芸術活動(風刺画家、即興的寸劇、シュルレアリスト・グループ、アニメーション)を分析対象として扱った調査結果を民族学的な解釈として提示した。観客からは「日本とエストニアのアニメーションはどのような違いがあると考えているのか」、「なぜ日本ではなくエストニアを研究することに至ったのか」、「エストニアの次世代作家によるユーモアはどのようなものがあり得るのか」などの質問が挙がった。

これらは、想定していた質問であり、発表時間の都合で省略していた部分のことであったので、質疑の時間に回答できて良かったと思う。発表後も観客が質問や意見を伝えに来てくれた。研究者とも休憩時間などに相互の研究について意見交換することが多く、今後連絡を取り合える関係性も構築できた。今後も積極的に研究成果を国際会議で発表していきたいと考えている。

会議名 現代アニメーション国際会議「Animafest Scanner Ⅺ」
派遣国 クロアチア共和国
会場 Cultural Information Center(ザグレブ)
期間 2024年6月2日~6月7日
報告書 『鹿島美術研究』年報第42号別冊(掲載予定)

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