公益財団法人 鹿島美術財団

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国際会議出席

2025年度
国際会議「77th OMEP Assembly and Conference 2025 in Bologna, Italy」
西影 めぐみ(神戸学院大学非常勤講師)

 2024年7月、公益財団法人鹿島美術財団の助成を受け、イタリア・ボローニャで開催されたOMEP(世界幼児教育・保育機構)第77回世界大会に参加しました。
 大会のテーマは「幼児教育における芸術と文化」で、世界約60か国から研究者や教育関係者が集まり、芸術を切り口にした幼児教育の在り方について活発な議論が行われました。私は、査読を経て採択された口頭発表を行うとともに、会期後にはレッジョ・エミリア市での現地視察に参加しました。

ボローニャのマッジョーレ広場

ボローニャのマッジョーレ広場(筆者撮影)

 私の発表テーマは「芸術的インスピレーション――レッジョ・エミリア・アプローチにおける創造性と革新の源流をたどる/Artistic Inspirations: Tracing the Roots of Creativity and Innovation in the Reggio Emilia Approach」でした。
 レッジョ・エミリア・アプローチとは、第二次世界大戦後北イタリアのレッジョ・エミリア市で誕生した独自の幼児教育モデルで、子どもを有能な学び手として尊重し、対話や探究を重視することを特徴としています。その中心にあるのが、芸術活動を行う空間「アトリエ」と、アトリエでの活動を統括する専門職「アトリエリスタ」です。

 私はこのアトリエで行われる多様な素材を使った探究活動が、20世紀の美術運動―たとえばクロード・モネの光の研究、ジョルジョ・デ・キリコの影の表現、アルベルト・ブッリの素材実験、ロバート・ラウシェンバーグのコンバイン・ペインティングなど―からどのような影響を受けたかを分析しました。教育現場での創造性を美術史的な背景から読み解くことで、レッジョの教育に息づく文化的基盤を明らかにすることを目的としました。

 私の発表は「表現(Expression)」をテーマとするセッションに位置づけられ、AI技術や文化継承、幾何学的芸術表現など、多様な研究と並んで行われました。他国の研究者たちは、教育現場での実践や観察に基づく報告が中心でしたが、私の発表は理論的な分析に重点を置いていたため、異なる視点から議論を補う形になりました。発表後には「教育を美術の視点から考えるのは新鮮だった」と多くの方に声をかけていただきました。こうした国際的な対話は、研究をより広い文脈で捉え直す貴重な機会となりました。

大会の会場

大会の会場

発表風景

発表風景

ローリス・マラグッツィ国際センター

ローリス・マラグッツィ国際センター

 大会終了後、レッジョ・エミリア市のローリス・マラグッツィ国際センターを訪問しました。
 センター内では、アトリエの見学や教育関係者の講演を通じて、戦後から現在まで続く理念の変遷について学びました。特に印象的だったのは、廃材などの工業素材を教育に再利用するリサイクルセンター「レミダ(Remida)」の活動です。素材の特性を生かした創造的な遊びが、子どもの探究心を刺激する仕組みとして整備されており、教育とデザインの融合を実感しました。

 また、レッジョの教育に長年携わるクラウディア・ジュディチ氏にインタビューを行い、「子どもには多様な表現方法を学ぶ権利がある」という理念の成り立ちや、初期のアトリエリスタが直面した課題についてお話を伺いました。彼女の証言は、私の研究テーマである「芸術と教育の関係」をより具体的に理解するうえで大変貴重なものでした。

クリエイティブ・リサイクル・センター「レミダ」の様子

クリエイティブ・リサイクル・センター「レミダ」の様子(筆者撮影)

クリエイティブ・リサイクル・センター「レミダ」の様子

 今回の参加を通じて、①国際的な学術発表の経験、②異分野の研究者との交流、③現地調査による一次資料の収集という三つの成果を得ることができました。ボローニャやレッジョ・エミリアでの経験は、今後の研究をさらに発展させる大きな糧となりました。
 このような機会を与えてくださった公益財団法人鹿島美術財団に心より感謝申し上げます。今後も成果を広く発信し、幼児教育と芸術の架け橋となる研究を続けていきたいと思います。

会議名 77th OMEP Assembly and Conference(第77回 世界幼児教育・保育機構 世界総会・大会)
派遣国 イタリア
会場 Savoia Hotel Regency, Bologna
期間 2025年7月14日~7月18日
報告書 『鹿島美術研究』年報第43号別冊(掲載予定)

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