公益財団法人 鹿島美術財団

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国際会議出席

2024年度
国際会議「Artists’ Strategies in Renaissance Italy
: Artists and Artworks on the Move」
伊藤 拓真(九州大学大学院人文科学研究院准教授)

 フィレンツェでの国際会議──ルネサンスを「移動」の視点から見つめ直す
2025年9月、イタリア・フィレンツェ郊外に位置するオランダ大学連合美術史研究所(Nederlands Interuniversitair Kunsthistorisch Instituut, NIKI)で、「イタリア・ルネサンスにおける芸術家の戦略:移動する芸術家と芸術作品」(Artists’ Strategies in Renaissance Italy: Artists and Artworks on the Move)という国際会議が開かれました。NIKI所長ミハエル・クワッケルステイン教授と報告者である伊藤が共同で企画したもので、鹿島美術財団からは、日本から会議に参加した3名の研究者(伊藤のほか、アントン・シュヴァイツァー 九州大学大学院教授、深谷訓子 京都市立芸術大学准教授)に旅費の助成を頂戴しました。

オランダ大学連合美術史研究所(入口)

 NIKIは、オランダの主要大学によって共同運営されている研究拠点で、美術史研究を専門としています。充実した図書館と、学生および研究者向けの宿泊施設を備え、学部生からポスドク、研究者までを対象に多様な教育・研究プログラムを展開しています。研究・教育・滞在が一体となったこの環境は、国際的な学術交流の場として理想的な条件を備えており、世界中から研究者が集う拠点となっています。
 今回の会議は、伊藤が2023年秋にNIKIのScholar-in-Residenceとして約3か月滞在した経験をきっかけに企画したものです。滞在中には、1500年前後のイタリア美術を地理的な広がりの中で再考する研究を進めました。従来、ルネサンスは古典古代の復興として語られてきましたが、実際には他地域との交流や影響の中で形成された多層的な現象です。そのような流動的な状況に、制作者である芸術家たちはどのように対応したのか――。そこで、クワッケルステイン教授の協力のもと、NIKIの国際的で開かれた環境を舞台に、ルネサンスを「移動」とそれに対する芸術家の「戦略」という視点から考えることを目的としました。

発表風景(伊藤)

 会議では、日本、イタリア、イギリス、フランス、スペイン、アメリカなどから参加した10名の研究の報告が行われました。伊藤は、フィレンツェの画家ギルランダイオが北方絵画にどのように応答したかを、技法と素材の観点から分析しました。同行研究者の深谷は、ヤン・ファン・エイクの風景描写がヴェネト地方の画家たちに与えた影響を論じ、シュヴァイツァーは16世紀末から17世紀初頭にヨーロッパにもたらされた日本の漆器を題材に、異文化受容の様相を明らかにしました。

 会議はハイブリッド形式で行われ、現地とオンラインを合わせて約90名が参加しました。NIKIの明るく開放的な講堂では、研究者が国籍や専門分野を超えて意見を交わし、自然なかたちで学問の交流が生まれました。会議後には、研究所に併設された庭園で懇親会が開かれ、和やかな雰囲気のもとで意見交換が続けられました。フィレンツェという歴史的環境と、NIKIが持つ知的ネットワークが見事に融合し、研究者にとって非常に刺激的な時間となりました。

発表風景(深谷)

発表風景(シュヴァイツァー)

会議後の懇親会にて

 今回の会議成果は、2026年末を目標に、オランダの出版社BrillのシリーズNIKI Studies in Netherlandish-Italian Art Historyとして刊行される予定です。ルネサンスを「移動」と「戦略」という視点から再考するこの国際会議は、日本の美術史研究が国際的に発信する新しい形を示すものです。鹿島美術財団の助成により、この会議を実現することができましたことに深く感謝しています。今後もこの経験を糧に、国際的な学術交流をさらに広げていきたいと考えています。

会議名 Artists’ Strategies in Renaissance Italy: Artists and Artworks on the Move
(イタリア・ルネサンスにおける芸術家の戦略:移動する芸術家と芸術作品)
派遣国 イタリア
会場 Nederlands Interuniversitair Kunsthistorisch Instituut, NIKI(オランダ大学連合美術史研究所)
期間 2025年9月19日
報告書 『鹿島美術研究』年報第43号別冊(掲載予定)

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